Program全国高校生 MY PROJECT AWARD ーオンラインSummit
全国高校生マイプロジェクトAWARD※の全国Summitに出場する48の学びのロールモデルプロジェクトを教材に、高校生自身がこれから深めたい問いを見つけ、自分だけのプロジェクトを磨き上げるプログラム。
全国Summit出場を逃した高校生を対象に、自分のプロジェクトをしっかり振り返って学びを深めたり、全国Summitに出場した高校生に刺激を受けながら、次の一歩をどうデザインしていくかを全国の仲間と考えていく。
また、彼ら彼女らに伴走する大学生・地域のNPOなどもつながる機会をつくっていき、日本の社会教育市場のノウハウ展開・ネットワーク化にも寄与していく。
※ カタリバが中心となって各地のNPO等と運営している日本最大級の探究学習の祭典
活動レポートReport
主体性を持って、 つくりたい未来に向けてアクションを行う学びのプロセス
認定NPO法人カタリバが推進している「マイプロジェクト」は、自らの興味や関心があるテーマを起点に、主体性を持って社会とつながりながら実際にアクションを起こすという学びのプロセスで、そのきっかけは2012年にさかのぼる。
東日本大震災の支援としてカタリバは、岩手県大槌町に子どもたちの放課後の学びの場として「コラボ・スクール 大槌臨学舎」を設置。支援を続ける中で、高校生自身から「自分たちも助けてもらうだけではなく、町を支援したい」という声が上がり、慶應義塾大学SFC井上英之准教授が提唱していたプロジェクト型の学びの手法「マイプロジェクト」をに基づいた活動を開始。そこから生まれたのが、「大きな地震が来たら戻らず高台へ」と記した木碑を建てるプロジェクトだった。震災の教訓を後世に残したいと志した高校生が住民と話し合い、木碑を定期的に建て替えることで、そこに記された教訓が記憶新たなものとして継承されるよう意図した。その思いは今も受け継がれ、2021年3月11日に2回目の新しい柱が建て替えられている。
高校生によるプロジェクトが実現したという成果の他にカタリバのスタッフが驚いたのは、高校生たちの変化だった。人前で話すことが苦手だった高校生が、地域住民と関わるうちに自分の意見を出せるようになり、自信をつけ、時に壁にぶつかりながらもついにプロジェクトを形にした。実社会とつながることで高校生は大きく成長できる、それが実現できる環境を日本全国に届けられないかと感じたカタリバは、2013年から「マイプロジェクト」の全国展開をスタートする。
発表と対話の機会をより多くの高校生に提供するために オンラインSummitを開催
「当時は高校生の探究やプロジェクトへの認知が今ほど広がっておらず、活動の相談をできる場が少なかったり、これから始めたい高校生や後押ししたい大人も目指す先のイメージを持ちにくい状況でした。参加する高校生が学びを得られることは前提にしながらですが、マイプロジェクトを通した学びの姿をさまざまな方が見て参考にしたり、考えるきっかけにできる機会として始めたのが『全国⾼校⽣MY PROJECT AWARD』でした」と、マイプロジェクトを推進するカタリバの山田将平さんは話す。
各都道府県単位で開催する地域Summitでプロジェクトを発表し、選抜された高校生たちが全国Summitに進む。そこでは各地から集まった高校生同士の交流や、第一線で活躍するイノベーターとの対話が3日間にわたって行われる。初回の2013年は20人13プロジェクトが参加。一部の高校生や先生たちの口コミなどの草の根の活動でだんだんと広がっていくような形だったが、探究学習が教育関係者の間で認知が高まってきた2017~18年ごろから参加プロジェクト数が2017年229件、2018年348件、2019年2,654件とどんどん増えていった。全国的に「マイプロジェクト」の認知度が高まる一方で、ジレンマも出てきた。「参加者が倍々で増えてきてしまったため、どうしても書類選考を行わざるを得ず、地域Summitにも参加できない高校生が増えてきてしまいました。高校生からも『自分たちの発表を見てもらいたい』『交流会だけでも参加したい』という声もいただいていたため、2020年度からオンラインSummitをスタートしました」(山田さん)。
2021年度には都道府県横断のオンラインSummitを全10回開催、413プロジェクト・1,239人が参加した。6プロジェクトごとに一つのグループをつくり、2~3人のサポーター・ファシリテーターが付いて、高校生同士の発表会、またそれに対する意見交換を一日かけて行う内容になっている。カタリバがここで最も留意したのが、サポーターとなる大学生の高校生への関わり方だ。「マイプロジェクトを経験した大学生もいたのですが、ファシリテーターなどは不慣れな人たちもいるため、事前に1時間半の研修を行いました。プロジェクトを始めたばかりだったり、周りに応援や相談できる人がいないという高校生がいる中で、一番大事なことは、プロジェクトに対して合理的・客観的なアドバイスをするだけでなく、取り組みや高校生自身を応援する言葉をかけたり、今後のこと・いま壁になっていることを高校生と一緒に考える姿勢です。年齢が近く、共感しやすい大学生にそうしたことをしてもらうことで、高校生たちにとっては大きな励みになったと思います」と担当する内海博介さんは話す。実際参加者のアンケートを見ると、「的確なアドバイスで悩んでいた点を解決できた」という他にも「否定する姿勢ではなく良かったところや特徴的な部分を褒めてもらってうれしかったし、自信にもつながった」という声も出ている。全体的な評価も、満足度は4段階で3.68と地域Summitの3.7に匹敵する結果が出ている。
「最初から意欲にあふれている訳ではなく、先生に背中を押されて参加している高校生もいます。それでもサポーターに認めてもらったことで自信が付いた、また他校の同世代がこんなに頑張って探究をしているということに驚きを感じた、という声が事後アンケートで寄せられています。高校生の成長には、発表と対話の機会が重要だとわれわれは考えていますが、こうした機会の提供がオンラインでもしっかりできていたのではないかと考えています」(内海さん)。