カテゴリー 22020年採択

認定NPO法人 金融知力普及協会

対象者数 80名 | 助成額 800万円

https://apfl.or.jp

Programリアビズ Real Business
~高校生模擬起業グランプリ~

 リアビズとは、高校生が自分で考えたビジネスプランを基に実際にネットショップを運営することで、ビジネスの楽しさや厳しさ、そしてお金に対しての感覚をつかみ、自らのなりわいを生み出すことに対する「心のエンジン」を駆動させるプログラム。

1.ビジネスアイデアの募集
  高校の教員を顧問とし、高校生で模擬企業を設立

2.ネットショップ準備
  オンラインのコンサルティングやセミナーを用意し、サポート

3.販売〜最終審査
  実際にネットショップを運営し、商品とお金のやりとりを行う

 売上高のみならず、マーケティングや、簿記、法務、人事など、また感想文を審査し表彰する。

 自分たちで主導して実施すること、法令順守や取引先との調整など、リアルなビジネス体験ができること、世の中に価値を生み出しそこから日々の糧を生むという経験から、将来にダイレクトにつながる学びを得ることができる。

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高校生たちが起業資金を基にリアルビジネスを体験

 高校生たちに起業資金を貸与し、ネットショップ上で会社を立ち上げ、自分たちで考えた商品を販売する「リアルビジネス」を体験してもらう――。「一見面白いプロジェクトですが、高校生たちが実際にお金をハンドリングするわけですからリスクがないとも言えない。逡巡していたときに、ちょうど三菱みらい育成財団の助成があると聞いて、やってみようと腹を決めました」と金融知力普及協会の鈴木達郎 事務局長は話す。

  同協会では、金融や経済の知識、それを使いこなすフィナンシャルリテラシーを「金融知力」と名付け、「全ての人に金融知力を」を理念に掲げ活動を行っている。若い世代に対しては、昨年度で16回目となる全国の高校生を対象にした金融経済クイズの日本一決定戦「エコノミクス甲子園」や、経済用語やその影響が楽しく覚えられる新感覚の経済カードバトル「経済TCGエコノミカ」の制作・イベントなどの金融教育を積極的に展開している。

  そうした中、財団の助成を受けて2020年度から始めたプロジェクトが「リアビズ 高校生模擬起業グランプリ」だ。高校生3~10人で模擬企業を作ってもらい、ネットショップを運営するための商品アイデアとビジネスプランを提出してもらう。20年度は49チーム(256人)、21年度は49チーム(268人)が応募し、審査に通った10チームには起業資金として30万円を貸与。高校生たちは各々社長・人事法務部・経理部・仕入部・広報マーケティング部などの役職につき、仕入れから製造、販売、広報、顧客対応までのリアルビジネスを体験していく。さらにその売り上げ・マーケティング・決算などから審査を行い、10チームの中からグランプリを決めていくというプログラムだ。30万円はプログラム終了後に可能な範囲で返済してもらい、マイナスになった場合でも債務は発生せず、利益が出た場合は公序良俗に従う範囲で高校生たちが自由に使えるようにしている。

  ビジネスプランの中には、「あったらいいな」という身近な発想の商品から、地域特性や社会的課題をとりこんだものもある。例えば、広島にある高校の「折り鶴ブックカバー」は、平和記念公園に捧げられた折り鶴の処分費用に多額の税金がかかっていることに注目し、その折り鶴を原料にした再生紙で作られたものだ。また20年度のグランプリとなった商品は、沖縄・琉球王朝起源の金細工の一つ「房指輪」をアレンジしたブレストレット。「房指輪」は7つのチャームが一つのリングについており身に付けにくいが、ブレストレットにするというアイデアにより、伝統工芸を現代のライフスタイルにうまく取り込んだ。広報も工夫し、地元メディアをうまく巻き込んで県民性を刺激することで、すぐに売り切れてしまった商品も多々あるという。

  しかし当然のことながら、うまくいくことばかりではない。仕入れ先が見つからない、コストが見合わない、売れ行きが思うようにいかない、不良品が出てしまったといったビジネス面だけでなく、メンバー内で意見が対立する、脱落するメンバーが出てくるなどの人間関係面でも、さまざまな困難が高校生にたちふさがる。「最終的には一人になってしまったチームもありましたが、これまで全チームが販売にまでこぎつけてきたんです。高校生たちの責任感とやりきる力、これは嬉しい“予想外”でした」と鈴木さん。

領収書を書く高校生。販売終了後には、プロが損益計算書・貸借対照表の監査を行い、適正に処理されたかを確認している。

地域産業の一つジーンズを使ってコースターを作るため、製造者のもとを訪れ、デザインの打ち合わせをする。

地元の企業の指導を仰ぎながら、爬虫類専用の木製ケージを高校生自ら制作。

「お金と価値と感謝のふれあいがビジネスの基礎」

 もちろん協会ではこれだけの成果を出すために、手厚いサポートを行っている。ビジネスマナーや経理、ネット販売のコツをテーマにしたビジネスセミナーを開いたり、各チームには「エコノミクス甲子園」の卒業生である大学生を中心としたメンターと、パートナー企業である金融系企業からの社会人メンターがつき、2週間に1回程度の頻度でミーティングを行い、進捗状況の確認や課題解決を図っていった。「お金が絡むので、必ずチームには先生に顧問として入っていただいたのですが、プログラム終了後に感想を聞くと、『目に見えて子どもたちが成長していった』『普段は勉強やイベントに無関心な生徒が本気を出しているので驚いた』という声をたくさんいただきました。私自身も、日本人が苦手と言われている『交渉力』を身に付けてほしいと思ってアドバイスをしたところ、最初は遠慮していた子どもたちが最終的にはタフなネゴシエーターになっていたり。単に自分の要求を通すのではなく、相手の事情も鑑みて、そのときのベストな妥協点を探していく、そういう力が身に付いていく過程を感じることができました」と鈴木さんは話す。

 この「リアビズ」プロジェクトは、パートナー企業である投資信託会社トップの「お金と価値と感謝のふれあいがビジネスの基礎。最初から投資やFXなどの虚業を持ち上げてはいけない」という考えをヒントにスタートしたという。「この考えに賛同し、『自分たちも若いときに体験したかった、ぜひ応援したい』とサポーターを名乗り出てくれる起業家の方も多い。リアルな体験を提供できる環境を整えつつ、残念ながら審査に通らなかった高校生たちに向けてのカリキュラムなども検討していきたい」と鈴木さん。

「リアビズ」のキャッチコピーは、「「夢を具体化する」体験を積む場。」。夢を描いているうちは楽しいが、実際世の中のお金の流れは複雑で、利益を生むことがいかに難しいかことか。リアルなビジネスの場だからこそ容赦なく立ちはだかる障壁や失敗を、高校生たちは体験する。一方で、自分たちがつくり出した価値を認められる嬉しさ、目標を一緒に追う仲間のありがたさも体験できる。ビジネスの失敗と楽しさの体験は、社会に出たときに困難を乗り越える力になるはずだ。

 

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