ProgramT×ACTION
「T×ACTION(タクション)」とは生徒による探究活動や地域貢献活動、自己能力伸長活動、進路活動の総称である。普通科と海洋システム科併置の高校であること、岩手県における東日本大震災最大の被災地の復興を担う人材として、生徒による主体的な取り組みを目指すことから、本プログラムのスローガンは「Challengership」である。
1年前期は職場見学や体験学習などインプットを重視、1年後期の探究活動(Season1)、2学年前期の進路希望別の探究活動(Season2)、2学年後期から3学年での探究活動の深化(Season3)を通じて「計画力・実行力・発信力」を段階的に高めていくプログラムである。
また、本プログラムには復興教育、コミュニティー・スクール、ボランティアに関する活動も含まれており、地域課題や学際融合の観点を踏まえた体系的な取り組みとなっている。さらに、地元自治体や経済団体、大学、NPO、国際姉妹都市等の外部団体の支援体制を整え、専門性の高い指導者によるサポートを行っている。
高校がプラットフォームとなり、プログラムを通じてさまざまな立場の人を結び付け、生徒の研究や実践が地域課題や世界の重要課題の解決の役割を果たす活動となっている。
活動レポートReport
震災の記憶薄れる中 探究学習を体系化
東日本大震災では15メートルを超える津波に襲われた陸前高田市。21年春に被災地最大となる126・6ヘクタール、高さ10メートル前後のかさ上げ造成工事がようやく完成した。平野部にあった高田高校も、本校舎や広田校舎(旧広田水産高校)が全壊。15年春には造成地よりさらに高台に移転した。一方で、その頃から生徒の変化も見られるようになったという。生徒は震災時には小学生で、それより上の年齢に比べれば主体性・自主性に欠けているように感じられた。さらに、3年生になって進路目標が決まらない生徒も目立ってきた。
そこで17年度から総合的な学習の時間を体系立てて展開しようと、ビジネスの視点を取り入れた「T×ACTION(タクション)」(TAKATA×ACTIONの略)を実施している。普通科と水産系の海洋システム科の併置校というのも強みだ。
21年度の1年生は、11年当時は小学校入学前。被災時の記憶があまりなく、物心がついた頃から何もかもが足りない生活に慣れてきた。逆に、震災の課題を正面から取り上げやすくなったとも言える。
1年生の前期はインプットを重視して職場見学や体験学習を、後期は探究活動(Season1)を実施。2年生前期は進路希望別の探究活動(Season2)、同後期から3年生では探究活動の進化(Season3)――と、計画力・実行力・発信力を段階的に高めることを狙っている。19~20年度に県教委のコミュニティ・スクール導入推進モデル研究指定を受けたことも相まって、街の復興に取り組む地元自治体や経済団体、県内外の大学、NPOなどからの手厚い支援を受けている。「外部の力を活用することで、探究活動がより深まります。『社会に開かれた教育課程』とはこういうものかと実感します」と坂本美知治校長は振り返る。
10月1日の文化祭(高高祭)で行われた2年生の成果発表会で「音楽が子どもたちの成長に与える影響」をテーマに発表して審査員の河野哲也・立教大学教授から最優秀賞を贈られた保育チームの菅野未来(みく)さんと小坪莉奈さん(いずれも普通科)は「音楽療法を生かした保育士になりたい」と声をそろえる。高大連携で立教大の学生らと「高齢化が進む中で陸前高田の豊かな海を守るためには」に取り組んだ村上さくらさん(同)は「漁業の問題点から解決策を考えるという視点を通して、看護師という自分の将来にも生かすことができると感じました」と話す。