Program北陵グローバルゼミ
地方都市から、世界が直面する課題の解決に向けて大きな一歩を踏み出す人材を輩出することを目的として「心のエンジンを駆動させるプログラム」を実践していく。
東京の「一般社団法人ディレクトフォース授業支援の会(DF)」との連携によって、世界的な課題をあぶり出し、その解を探究することを目標とする。
対象は2年生全員とし、生徒の主体的・協働的な探究活動によって、未来を創造する力を育成することを強力に推進したいと考える。
東日本大震災から10年が過ぎた今、被災地みやぎで展開する、社会に貢献する高校生の志を育むプログラムとしたい。
具体的には、DFとの共同企画である北陵グローバルゼミは、16名のDF講師を東京から招き、各講師からのミニ講演会とゼミ形式のセッションを2日間にわたり実施する予定。このゼミの成果を受けて、生徒は自らの興味関心に基づいて「課題研究Ⅱ」における探究課題を決め、グループ研究を経た後、全校体制で10年間継続しているオールイングリッシュの成果発表会へとつないでいく。
活動レポートReport
豊富な社会経験を聞き 解のない問いを考える
1900年創設の宮城県第二中学校を前身とする伝統校で、「北陵」は現在地に移転する前の立地や地名に由来する旧制中からの通称。学校案内にも「東北大学合格者全国1位」とうたうように毎年100人近くの卒業生を近隣の東北大に輩出する県内トップの進学校であり、これまで総合的な探究の時間の中核を成してきた「課題研究Ⅱ」でも、18年度から東北大大学院経済学研究科の教授の指導により多面的なテーマを設定して研究活動を進めるなど、連携を深めてきた。
しかし、そうした環境や、中央との情報格差が生徒の進路意識にも影響し、なかなか他の有力大学に目が向きにくいという悩みも抱えている。
一方、1年生では15年度から希望者を対象に、一般社団法人ディレクトフォース(DF)との共同企画で東京研修を行ってきた。DFは財界人や官界人が退職後も知見や人脈を生かして社会貢献活動を行うことを目的に設立された団体で、その一環として11年には実社会での豊富な経験を踏まえた質の高いキャリア教育を中高生に提供する「授業支援の会」を設置。①自分の将来を見つめる②仕事について考える③社会の急速な変化(グローバル化、人工知能〈AI〉、デジタル化、多様性等)に対応する④地球規模の問題(持続可能な開発目標〈SDGS〉等)に意識を持つ――をテーマに授業を行っている。
DFとの連携は東京大学のオープンキャンパスとセットにした「未来キャリア創造プロジェクト」の一環で、基調講演とともに、5~8人の小グループがDF講師から30分ずつ3回転の授業を受けることができた。ただ、そのために参加人数が毎年150人程度に限られていた。20年度は新型コロナウイルス感染症の拡大防止でオンラインセッションに替えたが、本物に触れさせるという同校の趣旨からすると残念な形式となった。
そこで21年度は、課題研究Ⅱの中で2年生全員を対象にした「北陵グローバルゼミ」として実施することにした。三菱みらい育成財団の助成により延べ2日間、東京から各回16人のDF講師を招くことが可能になった。まず初日は40人のクラスを半分に分け、解のない問いにどう向き合うかを問題提起してもらう。2週間後、4人の小グループで話し合ったことを講師の前で発表し合った。そうした協働的な体験をその後の課題研究にも生かしたい考えだ。
渡辺敦司(教育ジャーナリスト)