Program海を素材とするグローバルリテラシー育成
~世界を舞台に活躍するスケールの大きな人材を目指して~
海洋問題に係る協働型学習を中心とする「協働型学習プログラム」と「東日本大震災復興プログラム」を通して、「グローバルリテラシー」と名付けた「思考力、コミュニケーション力、多様性・協働性・行動力」を育み、地域から世界に直接アクセスし、対話によって合意を形成し行動できるグローバルリーダーを育成することを目的とする。
協働型学習プログラムでは、1学年「地域社会研究」において、SDGsと関連付けながら「海と防災」「海と産業」「海と人間」「海の文化」「三陸の自然」の五つの領域で研究活動を行い、2学年「課題研究Ⅰ」「総合的な探究の時間」と3学年「課題研究Ⅱ」「総合的な探究の時間」につなぐ。
2学年以降は地域の研究から世界に目を向け、世界に共通する課題や地域と世界とを結び付ける課題を設定することによって、グローバルな視点の獲得を目指し、地域社会研究と同じ五つの領域の研究を深める。
また連携先の指導者による指導・助言や、外部機関との連携を図り、研究の専門性を高める。「課題研究Ⅱ」では、英語による発表スキルの向上と論文作成に取り組む。
東日本大震災復興プログラムでは、大学・企業・国際機関等と連携して、大震災の経験を素材とする学びを展開、グローバルな観点から未来の社会像を創造し、その実現に向けて協働的に行動するスケールの大きな復興の担い手の育成を狙いとする。
活動レポートReport
地域と海の課題を 地域との協働で探究
市内のすべての公立幼・小・中と同校が、ユネスコスクールに加盟している気仙沼市。学校や地域の関係者が協力し、気仙沼の「海」をテーマにESD(持続可能な開発のための教育)を推進してきた。子どもたちは環境や防災にかかわる課題を幼少期から身近に感じながら成長していく。
気仙沼高等学校では、その素地をさらに伸ばし、未来の地域像を創造できる「グローバルリテラシー」の育成を目指す。探究型・協働型の学習活動を通して、思考力、コミュニケーション力、多様性・協働性・行動力を身に付け、地域から世界に直接アクセスし、対話によって合意形成・行動ができる「地域起点のグローバルリーダー」育成につなげようとしている。
具体的には「課題研究」「総合的な探究の時間」を軸とする全学年での「協働型学習プログラム」、そして、「東日本大震災復興プログラム」の二つで実践する。同校の強みはSGH指定校時代に築いてきた大学や諸機関との連携、情報発信のネットワークだ。多様な人材との交流、指導・助言が生徒の視野を広げると期待を込める。
1学年の「地域社会研究」は、全員が海を素材として地域課題を理解し、探究の手法を身に付ける。少人数のグループで関心のある地域課題を取り上げ、取材や調査をして解決法を提案していくもの。昨年11月に行われた中間発表会では、地域支援を手掛ける企業やNPOのスタッフをコメンテーターに招き、グループ発表にアドバイスをもらった。
フードロスをテーマにしたあるグループは、食料品店を取材し、捨てられる食品が生まれる理由を調査。再利用法の開発やフードロス削減を市民に呼び掛けることを提案した。すると「呼びかけを誰に届けたいの? その方法は?」と、早速質問が飛んだ。予定調和ではないやりとりが生徒の学習意欲を喚起している。
この経験を起点に2学年の「課題研究Ⅰ」、3学年の「課題研究Ⅱ」に発展させる。テーマは同じく海洋問題で、他地域やグローバル課題と関連付けて、「海と防災」「海と産業」「海と人間」「海の文化」「三陸の自然」の5領域をさらに発展させて研究活動を行う。「課題研究Ⅱ」では英語による発表と論文作成に取り組む。研究企画部で理科の鈴木悠生教諭は「3年間で達成感のある学びの実感を持たせたい。地域の人の力を借りて学び、学校の枠、自分の枠を飛び越えていってほしい」と語る。
長尾康子(教育ジャーナリスト)