カテゴリー 12021年採択

栃木県立佐野高等学校

対象者数 480名 | 助成額 198.5万円

http://www.tochigi-edu.ed.jp/sano/nc2/

ProgramSanoグローカル構想
田中正造型グローカルリーダーの育成

 中高一貫校として、中学1年次から高校3年次まで全員に対しグローカル探究プログラムを実施する。協働研究を基本とし、その探究プログラムの中で、高校1年次は「グローカル基礎」と称し、主に地域の課題研究に取り組む。2年次は「グローカル応用」として、研究対象のエリアを広げ異文化研究を含め海外の社会課題と関連させた研究を行う。3年次は1年と2年で研究したものをまとめ上げてさらに研究を続け、「学びの計画書」や「シンカ宣言」として研究をまとめ、キャリアパス探究を実施する。 

 本プログラムの特徴の一つが、外部の専門家や外部機関とのつながりの強さである。テーマ設定をしていくために、大学の教員や外部機関の専門家等による講演や、地域で活躍するリーダーによるシンポジウム等を実施している。また、外部機関へのフィールドワークも必ず実施している。例えば、障がい者の働いている工場を見学したり、中山間地域の再生に関して、里山再生の実践例等を学んだりしている。

 また小さなグループでの発表や、中間発表、研究のまとめの課題研究発表、さらに高校1、2年生全員によるポスターセッション、代表者による成果発表会など、生徒が発表する機会が充実しているプログラムとなっている。

レポートアイコン
活動レポートReport

幸せな学校を目指し 持続可能な課題研究へ再構築

  郷土の偉人、田中正造をモデルに、地域貢献から世界の社会課題解決を図る視野の広いリーダー育成を目指してきた同校。創立120周年を迎える伝統校だ。
 2008年度には附属中学校が開校し、中高一貫校としてカナダ語学研修や台湾への修学旅行などグローバル教育を推進。2008年度から20年まではスーパーグローバルハイスクール(SGH)指定校として課題研究に早くから着手していた。
 中高一貫校化から駆け抜けた10年の蓄積は大きい。校内では課題研究を評価するルーブリックの作成や、教科指導におけるアクティブ・ラーニングも推進してきた。外部に向けては課題研究の軸となるフィールドワーク、宇都宮大学での発表会や佐野市議会への政策提言など表現と発信の機会を増やし、それらを支える外部の専門家や諸機関との連携も深まってきたところだ。

 SGH3期生の自己評価によると「グローバル社会に貢献する高い志」を持つ生徒の割合は、高校3年間で45%から80%に増加するなど、生徒の意識は確実に変容を遂げている。SGH指定の終了した今「ポストSGHに何を目指すか」が向こう5年間のチャレンジだ。従来の取組を継承しつつ、生徒をより深い探究へと導くにはどうすべきか。
 令和2年春に着任した青柳育夫校長は、教員や生徒、保護者に「幸せな学校をつくろう」をテーマに提言を募集した。コロナ禍と重なり、学校や教師の存在意義、これからの教育のあり方を真摯につづった提言が集まったという。こうして策定されたのが「Sanoグローカル構想」だ。生徒が身に付けるべき資質・能力を「探究力」と「人間力」に分け、それを支える12の力を定義して、これまでの取組を持続可能な形に整理した。

 1年目となる今年度は、多様性に配慮したジェンダーレス制服の導入、「佐野市高校生災害ボランティアネットワーク」の発足など、生徒発の多彩な活動が実現した。「自分たちが動けばできる、という実感が生徒に生まれている。また、教員も生徒を信じて任せてみよう、伴走者になろうという意識が強くなった」と、青柳校長は話す。
 学校にかかわるすべての人のウェルビーイングを実現しようとする行動力に、グローカルリーダーシップが早くも芽生えていることが見て取れよう。

長尾康子(教育ジャーナリスト)

昨年度の学校祭の様子。生徒が独自のコロナ対応案を考え、保護者参加の開催にこぎつけた。

ビデオアイコン
成果発表動画Presentation

一覧に戻る