Program『学び楽しむ』
~内から外へ 自ら超える”挑戦と自立”~
総合的な探究の時間を活用し「学び楽しむ」生徒を育てる3年プログラムである。正解のない社会を生きていく生徒たちに必要な力は、自分自身で問題に対してどうアプローチしていくか考え行動したり、対話を通して気付きを得たり、自らを客観的に見たりする力であり、そういった力が「学び楽しむ」力だと考える。結果よりも、研究のプロセスを重視し、3年間を通して行う授業ごとの振り返り、一つの問いについてじっくりと考える「哲学対話」、先輩や後輩と語り合う「探究Week」、上級生が下級生の学びをサポートする活動を通して、生徒の自己肯定感、主体性、メタ認知力等を高めていく。
1年生 学び方を学ぶ:講義やグループワーク、発表を通して探究のプロセスを知る
2年生 個人研究:1人1テーマで自分の興味関心に基づく探究活動を行う
3年生 将来についてのプレゼンテーション:1・2年生で培った力を生かす
活動レポートReport
他者との対話を通じて 自己肯定感を高める探究を模索
2007年に設立された総合選択制の足利清風高校。普通科2クラス、商業科2クラス、情報処理科1クラスの全学科で「総合的な探究の時間」に取り組んでいる。
心のエンジンが駆動するとは、生徒が「学び楽しむ」状態であると捉え、次のような普通科における3年間のプログラムを構想した。
1年生は、探究に必要な思考法や表現力のスキルアップを図る。課題を発見し仮説検証していく方法を学ぶ。「普通って何?」など、哲学的な問いを投げかけ、じっくり考える「哲学対話」も行う。
2年生は、個人研究をスタートさせ、社会人や大学生と語り合う3日間の「探究ウィーク」で、活動を深化させていく。3年生は、自分の進路やキャリアプランを構想し「将来プレゼン」を夏の三者面談で行う。また、1年生の哲学対話でファシリテーターを務め、2年生の個人研究のアドバイザーとしても活動する。
これらの活動のバックボーンとなるのが、生徒が「学び楽しむ」ための五つの力だ。自分を「愛する力」、グループで「協働する力」、自分自身や、年齢や立場を超えて他者と「対話する力」、自ら立てた目標に「挑戦する力」、毎時間の振り返りを通して「自律する力」が必要と考える。3年間で割り当てた活動が、どの力を伸ばすのかを意識しながら全体計画を立てていった。
2020年度に普通科1学年から試行を始め、12月には生徒の興味・関心のあることをテーマにしたポスターセッションを行った。近隣の小中学校や大学など、外部の人にも見てもらい、モチベーションアップにつなげようと考えたのだ。生徒は発表へのコメントや質問を真剣な表情で受け止めてはいたものの、それに対して自分の考えを論理的に述べる力はまだ弱かった。そんな姿を見た荒川知佳教諭は、「普段の授業から、どうしてそう考えるの?と、意識的に投げかけ、思考を言語化することを促していった」。
2年生になった生徒たちは現在、個人研究に取り組む。テーマは身近な食べ物や人気アニメなど様々。自分の考えを徐々に表現できるようになってきた。まもなく壁面をホワイトボードに作り替え、自由に使える「探究ルーム」が完成し、思考の広がりを促す環境も整う。自己肯定感が低い傾向にある生徒たちが、学ぶ楽しさを感じられるよう、教員自身も予定調和ではないプログラムの構築を「楽しんで」いる。
長尾康子(教育ジャーナリスト)