Program「東雲(しののめ)探Qプラン」による、
幅広い視野をもつ自立的探究者の育成
本プログラムは探究的な活動を通して知識や経験を有機的に結び付け、学校での学習内容、日常生活、グローバルイシューズが互いに関連している実感を持たせ、幅広い視野の下に自立的に探究する力を身に付けることを目指している。
1年次は、自然科学の分野のQ(問い)に対して探究のプロセスを繰り返し経験し、探究の面白さを感じながら、探究の意義、研究倫理、検証方法などを理解し、探究に必要な基礎的なスキルを身に付けさせる。2、3年次は、教科学習や日常生活でのQ(問い)を基に、自ら課題を設定させ一連の探究的な活動を行う。プロセスの途中で、他者との議論や意見交換、相互評価等の互いにフィードバックする機会を設定し、批判的な思考力やメタ認知の資質能力を向上させ、自立的に探究する姿勢を身に付けさせる。
このことを通じて、グローバル化した時代において、社会に貢献しリーダーとして活躍できる人材に必要な資質能力を身に付けることができると考えている。
活動レポートReport
化学基礎からの実践研究で 理数探究基礎など本格実施へ
千葉大学から徒歩10分と近く、千葉県教委指定進学指導重点校でユネスコスクールにも認定されている千葉東高校。「教養の復興」(広く学び自ら深める姿勢と能力、知を行動に移す力、異なる思想・価値観を受け止める力)を掲げ、グローバル人材を育成するととともに、国際理解教育や理数教育、高大接続を展開。文系・理系を問わず、すべての教科を学ぶことで、大学合格にとどまらず学問の基礎を身に付けてほしいという願いを込めている。
ただ、数年前まではいた「やんちゃで先生たちを困らせるぐらい自分たちで解決方法を打ち出していく生徒」が少なくなったというのが、卒業生でもある奥田雅之教頭の実感だ。教員間でも、真面目で優秀な生徒たちが与えられた課題には熱心に取り組むものの、積極性に欠けてきていることに危機感が募っていた。そうした中で新学習指導要領が打ち出した探究学習の方向性は、生徒の実態とぴったり合ったという。
プログラムは4段階(フェーズ)を経て、2022年度入学生より1年次に理数探究基礎(1単位)、2年次に総合的な探究の時間(同)で本格的に導入する計画だ。
フェーズ0の実践研究として20年度、探究学習に熱心な化学の教員が、化学基礎の時間や長期休業中、化学分野の内容を中心とした課題を設定し、▽検証計画の立案▽観察・実験▽結果の処理▽分析・考察・推論▽表現・伝達――という一連の探究的な活動を5回実施し、生徒の変容を検証した。
21年度は、フェーズ1の実践研究として、科目を2年次の生物基礎や物理基礎にも広げ、理数探究基礎の導入プログラムを試行。さらに、2年次の総合的な探究の時間では、23年度の試行として夏季休業中を中心に、教科学習や日常生活の疑問を記録に残し、整理して自らのテーマを設定。先行研究の論文検索を通じて学術的な広がりを意識させるとともに、SDGsと結び付けることで社会的意義も見いださせた。
22年度入学生からはフェーズ2として、理数探究基礎でのプログラムを本格実施。物理・化学・生物の3分野から関連する身近な現象を課題として設定し、年間3~4回の探究活動を行ってレポート作成や発表会を行う。
2年次の総合的な探究が本格実施となる23年度はフェーズ3として、1年次に身に付けた基礎的なスキルを2年次にどう活用させるかを調整しながら、プログラムの達成度合いを評価するとしている。
渡辺敦司(教育ジャーナリスト)