カテゴリー 12021年採択

千葉県立佐倉高等学校

対象者数 840名 | 助成額 200万円

https://cms2.chiba-c.ed.jp/sakura-h/

Program未来の種を蒔く SAKURA PROJECT

 普通科280人全員で4人班を編成し、3年間課題研究に取り組む。1年次は探究学習の手法を学びながら、同時並行で研究に取り組み、テーマ設定から発表までの研究サイクルを体験する。2年次は新たな研究班を編成し、フィールドワークや海外交流を実施した上で、研究の質を高めて発表する。3年次は2年次の研究成果を報告書にまとめる。学年末には全生徒参加の課題研究発表会を開催し、それが校内のゴールとなる。発表形態はプレゼンテーションソフトを使ったスライド発表である。 

 本校では「研究を楽しむ」をスローガンに、生涯継続する探究マインドセットを育てることを目標としている。テーマ設定においてはSDGsや地域創生などのヒントは提示するが、原則自由とし、ワクワクする研究テーマに出合うまでの試行錯誤の過程を重視している。また発表機会こそが探究を回す動機になると考え、発表体験を積み重ねている。まずは小さなサイズでの発表会、そしてクラス発表、学年交流発表と、発表を通じたブラッシュアップを図っていく。 

 海外研修はシンガポール・オランダ・ドイツ・英国の4カ国(ドイツ・英国は隔年で実施)を予定している。昨年度はコロナ禍により実施できなかったが、オンラインで交流校とのパイプは維持している。課題研究のリサーチや発表を通じて、語学力と学びを深めていく。

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活動レポートReport

教員を「案内人」として 研究を楽しむ文化が定着

  1792(寛政4)年に創設された佐倉藩の学問所を起源とし、旧制の私立中学校から県立に移管した1899(明治32)年から数えても120年以上の歴史がある佐倉高校。1910(明治43)年に竣工した本館は記念館(国登録有形文化財)と名称が変わっても、校長室や事務室などの管理棟として健在。長嶋茂雄・巨人終身名誉監督が学んだ校舎として、今も見学に訪れる人があるほどだ。

 地域随一の進学校としての伝統に加え、県教委の進学指導重点校や文科省のSSH(13年度~)、SGH(16~20年度)にも指定。そうした蓄積の下、普通科7クラス(他に理数科1クラス)の生徒全員が、3年間の課題研究に取り組む。
 活動は4人グループの研究班を基本としている。試行錯誤の結果、そのくらいの人数が、対話的な学びを引き起こすとともにフリーライダー(ただ乗り)を出さないためにも、ちょうどよいのだという。
 1年次は探究学習の手法を学びながら、同時並行で課題研究に取り組み、課題発見、情報収集、整理・分析、表現という研究サイクルを体験する。研究テーマは「反社会的なものでない限り、自由」としながらも「社会を少しでも良くする研究」を目指すよう呼び掛けている。2年次は新たな研究班を編成し、フィールドワークやドイツなど3カ国の海外研修(コロナ禍はオンライン)で研究を深める班もある。3年次は成果を報告書にまとめる。

 「研究を楽しむ」をスローガンに、理数科を含めた生徒全員が研究、発表、議論するという「研究文化の当たり前化」が普及しているという。発表言語は日本語と英語の選択制としており、海外研修ができた年は7対3の割合だった。異文化体験こそが成長の糧になると考え、在日外国人や大学生、民間企業、行政との交流も設定。外部発表会への参加も奨励する。
 学年で約70班にも及ぶ活動を学級担任と副担任で受け持つのは大変だが、教員の役割は「案内人」と位置付けている。指導という言葉は使わず、駄目出しも禁止して、相談と助言を心掛けている。黙っていても自主的に勉強する真面目な生徒のプライドをくすぐるのも、みそだ。
 教科学習との融合も、探究学習部の役割が大きい。同部の高柳良訓教諭(地歴公民科)が2月の授業で生徒に新聞投稿を呼び掛けたところ、たまたま取材に訪れた日、ある全国紙に2人並んで採用されていた。

渡辺敦司(教育ジャーナリスト)

県ICT教育のフロントランナーとして、校内Wi-Fiやグーグルワークスペースなども整備。今どきの生徒はスマホ一つで資料検索から発表用スライド作成まで、お手のものだ。

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