Program「WAJI活」半島の最先端から世界の最先端へ ①自律的・主体的に問題解決できる力
②創造に対し挑戦し、未来を切り拓く力を身に付けるプログラム
大樹が朽ちるときは幹から、新しい芽吹きは枝の先から。世界から見ると辺境の地にある日本、その中の地方の地方、過疎化であえぐ半島の先っぽにある輪島。現在、輪島市の人口は2.5万人を割り、高齢者の割合は47%を占める。2040年の予想では、人口1.5万人、高齢者53%と試算されており、この事態を打開するには、市内の高校生が地域の魅力を理解し、地元産業の担い手となる、または他県で輪島市の魅力をPRできる人材となる必要がある。
本プログラムは、自然や伝統産業、観光資源の宝庫である輪島に生まれながら、その魅力に気付かず発信する方法を知らない本校生徒に対して、自分の世界は自分の意志によって広げられるという夢を持たせ、自己実現に向けての目的意識を醸成するものである。
世界農業遺産である「能登の里山里海」を擁する地方都市輪島を舞台に、2年間を通して、探究の手法を学び、調査活動を経て課題を発見し、解決に向けての方策について行政や一般社会へのPR活動を行う。さらにその活動について論文にまとめ上げることで、地域活性化のための観光産業と住民が安心して暮らせる生活環境が両立した、持続発展できるまちづくりの担い手を育成する。
活動レポートReport
外部人材とかかわりながら 地域の魅力再発見を促す
能登の豊かな自然に根差した第一次産業と観光業が両輪となり発展してきた輪島市。近年は国内外からの移住者も増えている。輪島高校では地域の魅力や課題を再発見し、探究する過程や成功体験を通して、自己変容を促す「WAJI活(わじかつ)」に取り組む。
「探究学習の宝庫である地域資源をテーマをとして対象化するだけでは、学びは深まらない」と、担当する寺田知絵教諭は言う。子どもたちは小中学校から地域を題材にした学習や体験に親しんでいるが、進学や就職を機にふるさとを離れて、初めてその魅力に気づくことが多いからだ。そこで、各自が興味・関心を寄せるテーマを優先して実施することにした。
1年次の2学期までは探究のスキルを身につける。施設・企業への取材・調査活動と発表を通して、探究の一連の手法を経験する。その中で各自がテーマを絞り込み、3学期にグループ単位で研究計画を練る。2年次の1学期から計画を実行に移し、探究活動を実施する。2学期にはポスター発表、3学期には論文にまとめ、互いの成果を情報共有する予定だ。
例えば「好きなアーティストを輪島に呼びたい」と目標を掲げた2年生は、どうしたら呼べるかを考えるうち、輪島の魅力発信と関連付けたアプローチを検討するようになったという。自分一人ではなく、校外に出て、地元起業家やIターン企業人などとかかわりながら、目標達成へのPDCAサイクルを回す。その中から地域の魅力を生かす視点を発見するプロセスを重視するのが「WAJI活(わじかつ)」の特徴だ。
輪島市は2021年度より「輪島市内高校魅力化プロジェクト」を立ち上げ、小中高一貫の教育制度改革を進める。WAJI活を支援するスタッフも配置され、外部とのコーディネートを手助けする。
同校はこれまで、総合学科において商品開発をしたり、朝市で実演販売をしたりと地域とのコラボ力を磨いてきた。総合学科は21年度で廃止されたが、そのノウハウを学校全体の探究活動として継承発展させること、そして地域の小中学校にも普及させる役割も担う。校外でのコラボイベント、ホームページによる発信力も強化していく。
探究の2年間で、自分の世界は自分の意志によって広げられるという夢を持たせ、進学やその後の人生における自己実現に向けた目的意識を醸成しようとしている。
長尾康子(教育ジャーナリスト)