Program地域に提案!
2016年度から福井県のモデル校の一つとして、「総合的な学習(探究)の時間」を活用して地域の課題解決学習に取り組んできた本校は、本年度から次の三つの改良を加える。
一つ目は、全生徒にSTEAM教育を導入し、教科横断的な学習と理数的な探究活動を促進していく。理数分野を得意とする生徒への探究活動の扉がこれまで以上に開かれ、また理数分野以外の探究をする生徒にとっても、視野が広がり、探究活動が豊かになる。
二つ目は、地域社会との連携を深め、生徒が企業や行政機関から実地で学ぶ機会を増やしていく。地域社会との連携における最も大きな収穫は、「魅力ある大人」との出会いである。自身の仕事に高い誇りを持つ大人たちから生徒がさまざまなことを学び、地域に貢献する意義や喜びを感じ取り、将来、福井県で活躍することを生徒がイメージできるようにしていく。
三つ目は、校内に地域の探究センターとしての環境を整備し、地域の中学生や大学生との交流を活発に行っていく。この交流を通して、お互いに教え合うことで力を付け、また多様な考え方を理解することで社会への適応力を養い、将来にわたって探究する姿勢を身に付けていく。
活動レポートReport
課題設定に「社会実装」の観点を持たせるSTEAM教育の導入
「総合的な学習(探究)の時間」のモデル校として、2016年から地域の課題解決学習に取り組んでいる同校。1・2学年は「中心市街活性化」「防災・災害」「観光」などのテーマ領域で、3、4名で1チームを組み、継続して探究活動を進める。解決案と取組の過程を「省察論文」にまとめる。
21年度より三つの改良を加えて充実を図った。一つ目は、STEAM教育を導入し、教科横断的な学習や理数的な探究活動を推進したことだ。「農業・畜産」領域をテーマにしたグループは、フィールドワークで企業を訪問し、ブランド米「いちほまれ」が県外より県内で人気が出ていないことに注目。B級グルメ「ソースカツ丼」での活用に向けて、飲食店と協議を進めている。米の配合や価格設定など、データ活用やマーケティングを取り入れながら、リアリティのあるプロジェクトが進行中だ。
このように「社会実装」の観点を探究に取り入れるとコラボレーションが進むことから、教員も自主研修会を開催し、教科を越えた探究のあり方や、教科でのプロジェクト型学習(PBL)を学んでいる。
二つ目は、地域社会との連携を深め、生徒が実地で学ぶ機会を増やすこと。生徒たちは市や公民館、大学などが主催するイベントや研究会などに積極的に参加する。ここ数年は、行政の各部署や企業、NPO、研究機関などとのかかわりが深まった。生徒の探究学習に伴走する助言者として、最終報告会への出席も依頼している。
三つ目は、地域の「探究センター」としての環境を整備すること。同校は22年4月から新学科「探究特進科」がスタートし、地域の小中学校からの注目も集まる。中学生や大学生との交流を行い、探究の知見を縦に広めていきたいという。
高校同士の横の連携にも積極的だ。21年度は、探究学習の先進校の高校生約100人が集う「高校生探究クロスセッション」を企画した。残念ながらコロナ禍のため中止となり、発表資料集を作成して実施に替えたが、22年度は実施予定だ。
モデル校としての研究を続ける中で「探究活動」という学びの認知は、着実に地域に広がっているという。探究企画部の永田卓裕教諭は「生徒に対して、本当の学びになるようなアドバイスをいただけるようになった。今後も地域と学校が連携し生徒の育成を進めていきたい。生徒には、地域に提案するにとどまるのではなく、貢献する意義や喜びを感じてほしい」と話す。
長尾康子(教育ジャーナリスト)