Programご縁コンソーシアムから生まれる地域の人材育成
~高校生と地域の協働による地域課題解決型学習の深化を目指して~
本校は、令和2年3月に「松江農林高校魅力化コンソーシアム」(通称:ご縁コンソーシアム)を設立し、地域や大学と連携して課題解決力のレベルアップを図り、生徒の学習意欲向上と地域貢献意欲の醸成を目指した各取り組みを実践する。
本プログラムを通して、中核となるフィールドと活動を設定し、2〜3年間継続して活動に取り組むことで、生徒が創造性と探求性を培い、主体的に学習に取り組む好循環を発生させたい。
1.中核となるフィールド
島根県東部の中海に位置する松江市八束町(通称:大根島・江島)は、観光資源が豊富で、全ての学科で取り組める題材がある。そして、生徒のモデルとなる大人・地域人材の協力体制が整っていることから活動フィールドとした。
2.中核となる活動
・サツマイモの無病苗の育成・商品化
サツマイモの無病苗を活用した地域活性化に向けて新たな商品開発をする。
・古民家再生【環境土木科】
古民家の庭園を再生し、地域再生をする。
・オゴノリの有効活用【総合学科】
中海に生息し、邪魔な存在となる紅藻類の一種であるオゴノリの食品分野および福祉分野での活用を目指す。
・八束町の魅力発信【総合学科】
大根島の地域資源に注目した観光商品造成をする。
活動レポートReport
地域や大学との連携により、学習意欲はもとより、地域への貢献意欲も向上
島根県立松江農林高等学校は、生物生産科、環境土木科という二つの専門学科と総合学科の計3学科で構成された専門高校。大きくは衣食住を学習領域とするが、生物生産系、また土木・造園系、福祉・食品・地域系など、単なる農業系専門高校の枠にはまらない分野をカバーしている。
2020年3月、受験生や保護者から第一志望校に選んでもらえる魅力ある学校への進化を目指し、島根大学、島根県立大学、島根県立農林大学校、松江市、松農会(OB会)、PTA、同校の7者による「松江農林高校魅力化コンソーシアム」を設立。通称の「ご縁コンソーシアム」は、神の国・島根が誇る出雲大社の「縁結び」の力にちなんだ。
コンソーシアム設立前も探究の時間や課題研究において、さまざまなテーマの下の活動が行われていたが、継続的な取組に発展していかないことが課題となっていた。そこで、コーディネーターやコンソーシアム構成団体の協力を得て、フィールドとテーマを絞り込み、2~3年間の継続した活動とすることで、生徒の主体的な取組が好循環を生み出すという仮説を立てて実行した。
中核となるフィールドは、学校から車で20分ほどの大根島・江島からなる八束町。ボタン、高麗人参、根菜類などの全国有数の産地で、観光資源も豊富。協働可能な企業も多く、各学科で取り組めるテーマ・課題が揃った地域として選定された。
八束町で進行している活動で、現在中核を成すのは、①サツマイモの無病苗の育成・商品化、②古民家再生経験を活かした空き家増加問題の解決、③寒天材料としてのオゴノリ有効活用、④各活動の関連付け、観光資源の明確化による八束町の魅力発信。その他にも、トウテイランという希少植物の栽培や小豆、稲の研究に関して島根大学の教授から直接指導を受けるという、超高校級プログラムを体験する生徒もいる。
肝心なのは、こうした活動が単なる「町おこし体験」ではなく、あくまでも学習プログラムとして、生徒の学びの原動力となり、社会に貢献できる人材の育成を目指しているという点だ。
こうした活動の明らかな成果として、今年度の国公立大学への進学希望者は、例年の2倍以上に増加した。また、課題解決型学習に興味を示して当校を志望する中学生も増えてきた。適切な研究課題に取り組むことで、主体的な学習への意欲が育つという仮説が証明されつつある。