カテゴリー 12021年採択

愛媛県立今治北高等学校 大三島分校

対象者数 85名 | 助成額 100万円

https://ohmishima-h.esnet.ed.jp/

Program大三島の地域文化遺産「大見神楽」の復活・伝承プロジェクト

 愛媛県立今治北高等学校大三島分校は、しまなみ海道のほぼ中央に位置する大三島唯一の県立高校である。現在、大三島には日本総鎮守である大山祇神社を中心とした歴史文化遺産や、風光明媚な景色を求め、多くの観光客が訪れている。しかしながら大三島の過疎化・少子高齢化は深刻で、地域文化の継承の担い手が不足しており、古くから受け継がれてきた大見神楽もその例外ではない。

 本プログラムでは、総合的な探究の時間を活用し、生徒自身が地域の歴史文化資源の発掘や地域の伝統文化の継承者との交流等の活動を通して、主体性や協働する力・伝える力を養うとともに、生徒および学校が大見神楽の担い手となることで、文化の継承が可能になるだけでなく、地域の活性化を図ることができると考える。 

 具体的な活動内容として、現在大見神楽を継承している方々からの聞き取り調査、演目研究・技能習得、道具や衣装の製作、神楽を通した地元小中学生との交流、大見神楽PR動画の作成、他地域への視察、旧暦1月12日ごろ(2月中旬)に行う神楽への参加等を計画している。

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活動レポートReport

400年以上も継承される 地域の文化遺産の担い手に

 本州と四国を結ぶ海の道「しまなみ海道」のほぼ中央に位置し、古くから「神の島」として信仰を集めてきた大三島は、近年深刻な過疎化・少子高齢化に悩まされ、30~40年前から比べると人口は半分、15歳以下は4分の1まで激減している。島唯一の高校である今治北高校三島分校も生徒数が減少したことから、島外からの生徒を積極的に受け入れるようになり、今では半数以上が島外生、県外からも毎年複数名の生徒が入学して、島内で下宿生活をしながら学校に通っている。

 1学年約40名の小規模校であることを活かした一人一人の顔が見える丁寧な授業に加え、温暖な気候と海まで徒歩で約1分の立地、地域の方々の協力によって実現するマリンスポーツを取り入れた体育や活魚の調理講習など、島ならではの独特な教育活動も同校の特長となっている。

 これまでも「大山祗(おおやまづみ)神社」の参道におけるボランティアガイドや建築家の伊東豊雄氏が主宰する伊東建築塾との協働活動、手作リパンフレット「私たちの大三島」や、島への移住者を取材した「大三島お仕事図鑑」の作成、戦国の世に瀬戸内海で活躍した「村上海賊」の調査・研究など、同校では探究活動の時間を利用した、さまざまな地域活性化活動に取り組んできた。そこに昨年度から加わったのが、県の無形民俗文化財「大見神楽」の研究と伝承だ。地域の少子高齢化はこうした伝統文化にも影響を与え、このままでは継承者不足のために廃れてしまう可能性がある。高齢化する文化継承者との交流を通じ、生徒が大見神楽の担い手として定着するまで活動を続ける計画だ。

 ところが新型コロナの流行に伴い、毎年2月に行われる肝心の神楽奉納が中止という事態に陥ってしまった。それでも愛媛大学の井口梓先生と社会共創学部の大学生とのグループワークで大見神楽のデジタルポスター制作や、地域の伝承者への聞き取り調査・フィールドワーク、また代表生徒5名による島根県の石見神楽視察とその伝承活動を続ける江津高校との交流など、できる限りの活動は行えたと担当する阿部潤也先生は話す。
 「初年度としては、計画の7~8割までは達成できたかと思いますが、文化継承の担い手というところまで考えれば、他の活動同様、何年もかけて生徒たちに受け継がれていくプロジェクトになるだろうと思っています」。

 

公民館で行われた聞き取り調査では、実際の舞の様子も披露していただいた。

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