Program進取(総合的な探究の時間)
「若者が島の未来をつくる ~島の魅力を島外へ、島の未来を私たちで~」
新上五島町は、日本創成会議が発表した「2040 年の消滅可能性都市」の中に含まれている。高校生は、このまま人口減少が続くと、生活水準や産業が衰退することを理解している。だからこそ、この状況を変えるため、総合的な探究の時間において、主体的に新上五島町の課題を探究し、解決策を見いだし、実践を行い、検証している。その中で、地域の協力機関や研究機関と連携し、中間報告等の定期的なプレゼンテーションや最終発表会を行い、地域に還元できる場を設定し、探究活動を深めている。
その特徴は、“生徒が自走する探究活動”である。生徒が積極的に動き、それを教員がフォローする探究の形態を取っている。また本校は、長崎県の離島の高校であるため、離島のハンディキャップが存在する。それを打開するために、ICT・リモートを効果的に活用したり、探究活動の拠点化を図っている。
また本校では、希望者に「上高ゼミ」と称して、個別最適化された学びの場を提供している。この「上高ゼミ」では、生徒個人がマイテーマを設定し、探究活動を行っている。このゼミを通して、より“生徒が自走する探究活動”の推進を図っている。
活動レポートReport
離島ならではの工夫で 生徒が自走する活動を進める
進取=先んじて自ら行動する。論語から引用したこの言葉を、上五島高校では「総合的な探究の時間」の名称として使用している。各学年普通科3クラス、電気情報科1クラス。普通科では1・2年で「進取」に取り組み、電気情報科では3年生の1年間に集中して活動を行う。
普通科生徒の探究活動は、入学直後に3年生が1・2年生グループにノウハウを教え込む「上高ワーク」という模擬活動からスタート。この時、ノウハウだけでなく、探究の意義や学びに向かう主体性といった活動の根本が下級生に受け継がれ、これをもって3年生は探究活動から卒業となる。
その後1年生は、「ソーシャル・チェンジ」という課題解決プログラムに取り組み、探究活動のスキルを身に付ける。そして12月頃、いよいよ5~8人程度のグループに分かれ、本格的探究活動がスタート。実践活動のピークとなるのは2年生の夏休み辺りで、検証・改善活動を繰り返しながら、10~11月に中間発表会、そして3月頃に最終発表会を迎える。しかし、ステージで発表できるのは選ばれたグループだけで、選に漏れたグループは、ポスターセッションへと回る。そのため「目指せ! ステージ発表」が生徒たちの大きなモチベーションとなる。
また、学外での探究活動やフォーラム参加などの個人活動も「上高ゼミ」の活動として奨励される。コンテストへの応募や、県内の大学生が集まるコンソーシアムとの交流なども含め、積極的に外部からの評価を受けるように心掛けている。
上五島高校が理想とするのは「生徒が自走する探究活動」。生徒自らが課題を発掘し、解決策を模索。机上の空論で終わらせず、必ず実験・検証を行うことで改善点を見つけ、次のアクションにつなげるというサイクルを繰り返している。
離島では以前からICTの積極的活用が重要視されていたが、近年はリモート講演会やオンライン会議なども全国的に普及し、地理的な制約も少なくなった。また、空き教室を改造して機能を拡充し、ポスターセッション用に大判プリンターも導入した「探究活動ルーム」も、活動拠点として大いに活用されている。役場や企業から協力が得やすいのも、住民同士の距離が近い離島ならでは。現在も新上五島町と長崎県がトヨタ自動車と連携して行っている交通インフラ整備事業に生徒たちも参加させてもらい、貴重な経験を積んでいる。