Program「沖高みらい探究プロジェクト」
~平和で持続可能な島づくりのために~
2年生を対象に、次に挙げる二つの主体的・協働的な学習を展開する。
1.キャリア教育を踏まえた社会探究学習として、島内の職業人を生徒が直接、選定・取材・編集して「えらぶ仕事ファイル」を作成し、島内の小中学校等に配布する。
2.SDGsを指向した科学探究学習として、島の抱える課題を生徒が直接、取材・調査・研究して「せりよさ研究発表会」を行い、自身のポートフォリオに加える。
本校は鹿児島から南へ約550km、沖縄から北へ60kmに位置する沖永良部島で唯一の高等学校であり、大学や専門学校等の上級学校もないため、島の最高学府である。それ故、在校生のほとんどが島内出身者であり、卒業後の多くが島外に出ざるを得ない。
島内の人 ・ 自然などを対象としたフィールドワークを行うことで、生徒の意識を「島だからできない」から「島だからこそできる」へと変容を図ることにより、島の素晴らしさを再発見する探究活動としたい。
そして、やがて島出身者のUターン人口を拡充し、リモートワークや起業を目指すIターン人口を創出して、人と自然が共生した持続可能な島づくりに貢献したい。
活動レポートReport
島だからできないではなく、 島だからこそできるへ
沖永良部高等学校は島唯一の高校。各学年に普通科2クラス、商業科1クラスという小規模の学校だが、島内には大学も専門学校もないので島の最高学府となる。それだけにほとんどの生徒が、卒業と同時に島を離れざるを得ないのが現状だ。島へのUターンを望む生徒は7~8割もいるものの、島内にどんな仕事があるかを知る機会もないため、実際に帰島する生徒は少なく、人口はこの6年間で約1000人も減少した。
「機会がないなら自分たちでつくればいい」。室屋洋一校長は書店で偶然見つけた、同じく離島の広島県立大崎海星高等学校の生徒たちが製作した『島の仕事図鑑』を手にそう考えた。「沖高みらい探究プロジェクト」の柱の一つが動き出し、書名も「選ぶ」と「永良部」をかけた『えらぶ仕事図鑑』に決まった。話し合いで選び出された島内24職種の方々に、生徒たちが直接連絡を取り、グループに分かれて取材に伺う。取材の進め方、原稿の書き方などは、島内に住むコーディネーター、ライターの方に教えを請うた。今年度中には完成、島内四つの中学校に通う生徒たちには1冊ずつ配られる。
社会探究学習として2年生全員で行われる『えらぶ仕事図鑑』と並行して、希望者23人で活動する科学探究学習プログラム「せりよさ」がある。島の古名が付けられたこの活動は、島を舞台としたフィールドワーク。島における農業・漁業・観光等の代表的産業や方言、エネルギー問題など、生徒たちが興味を持ったテーマをグループごとに調べ上げ、3月に発表会を行う。
いずれのプロジェクトにとっても、重要なカギとなるのが地域との連携だ。知名・和泊の両町長へのプレゼンテーションから始まり、役場・商工会・観光協会と学校が一体となったプロジェクト担当者会を結成。島内の民間団体や島に移住された東北大学名誉教授や鹿児島大学・名桜大学などの教育機関、PTAや同窓会など、ありとあらゆる縁を巻き込んでプロジェクトは進められている。取材に限らず、普段接触のない人たちとの出会いと、今まで知らなかった島の姿との出合いにより、自分たちの未来と島の未来が広がっていく。
「島だからできないではなく、島だからこそできる」。これは、昨年の卒業生が在校生に贈った言葉。この思いがプロジェクトという形で結実しつつあるようだと小倉良太先生は語る。「生徒たちが心を駆動させ続け、島や社会に貢献する未来につながる活動になってほしいですね」。